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通勤電車に乗ると,必ずといってもいいほど,携帯端末を操作している人が目に入ります.仕事場はもとより,自宅でインターネットを使わない人は例外的とさえいえますし,フェイスブックによる情報交流には閉鎖的な独裁国家での革命を引き起こすまでの力があります.各種ホームページからの情報やウィキペディアなどをコピー&ペーストして提出レポートとする学生がいるため,教師向けにそれを検出するソフトウェアまで売り出されているようです.手書きあるいはタイプライターで論文を書いていた世代の私にとっては,近年のすさまじい情報電子化のスピード,その伝達手段の多様化についていくのは大変です.今年から,大学の一部会議もペーパーレスとなり,資料をi─Padで見ながら協議していますが,最初は違和感があったものの,最近ではなかなか便利なものと思えてきました.
電子書籍が普及する以前から,新聞はもとより定期雑誌の発刊部数は押しなべて減少してきており,本誌を含めた医学雑誌も例外ではなく,10年前と比べると30%以上も減っているようです.直接手に取らなくとも,あるいは図書館へ行かなくとも,コンピューター端末から文献検索で必要論文のリストを作成し,司書に電話やメールで依頼すればダウンロードされた論文が手に入りますので,大学図書館の構造も変わりつつあります.本誌も大学や病院の図書館,医局,医院などでは定期購読されているものの,個人での購入に単発が多いことは,特集テーマごとに購入部数にかなりの差があることからもわかります.一方特集号であっても,この増大号のような系統的・網羅的な内容で書籍に近い内容のものでは,書籍同様に部数の減少はみられないようです.この情報電子化時代において,医学雑誌にどのような役割が期待されているかを十分考えて,編集方針や発刊形態の変更を検討する時期が来ているように感じます.
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