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編集後記
神崎 秀陽
pp.858
発行日 2011年6月10日
Published Date 2011/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102718
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東日本大震災に関連して「想定外」という言葉を飽きるほど聴かされました.地震や津波の規模が「想定外」で,また原子力発電所の電源喪失から核燃料溶解にいたる過程も「想定外」という発言を聞いていると,政治家,官僚はもとより,企業責任者や御用学者にいたるまで関係者すべてが責任逃れの言い訳をしているとしか思えないのは私だけでしょうか.少なくとも医学の世界では,医療事故が想定外として許容されることは考えられません.
東北三陸沖プレート部では,9世紀に今回と同規模の「想定外」の津波をもたらした大地震があったことがごく最近になって検証されたことから,従前の津波への対応策は問題とする学者もいたことが報道されました.一方,原子力発電所の事故については,一部の反原発グループの政治家や民間活動家は電力喪失により今回のような制御不能事故が起きるリスクを指摘していたものの,関連する学会や企業の研究者にはその認識は全く欠けていたようです.電力業界と大学の原子力研究者や政界との関係がどうであったかは分かりませんが,原子力応用学を専攻する学生の主たる民間就職先は電力会社でしょうから,強固な産学連携関係があったと推測できます.また地元においては,発電所誘致がもたらした莫大な経済的恩恵を受けたものが多数いたことも事実で,原発事故で避難した年配住民の1人がインタビューで,「やはり罰が当たったのかもしれない」と話していたことは印象的でした.
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