今月の臨床 ホルモン補充療法を再考する
HRTの適応を再考する
4.骨粗鬆症
森重 健一郎
1
,
澤田 健二郎
1
,
西尾 幸浩
1
,
田坂 慶一
1
,
村田 雄二
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(産科婦人科学講座)
pp.794-799
発行日 2003年6月10日
Published Date 2003/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100901
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はじめに
卵巣の摘出により生じた卵巣機能の喪失あるいは加齢に伴った卵巣機能不全よるエストロゲンの低下は,女性の骨代謝においては高回転型の骨代謝回転を引き起こし,骨形成を上回る骨吸収の亢進が起こるので骨量の低下を招く.女性の骨量減少は,閉経前であっても卵巣機能の低下しはじめる45歳ごろからはじまり,閉経の前後に骨量減少はさらに急激になる1).閉経直前および閉経後早期(特に2~3年以内)は,特に骨吸収の亢進が著しく年間3~5%の骨量減少が認められる.その後代謝回転は低下していくが,閉経後の10年間に15~20%の骨量減少が生じる.エストロゲンを投与すると骨吸収を主体に骨形成も抑制され,骨代謝回転が沈静化され骨量の減少抑制のみならず,骨量の増加さえももたらされる.
WHI(Women's Health Initiative Randomized Control Trial)の報告2)によりHRTの骨折予防効果が示された一方,乳癌,心血管イベントのリスクの上昇が示され,日本産科婦人科学会,更年期学会から「そのリスクとベネフィットを個別に評価して,個々の患者に合った選択をすべき」との慎重な見解が示された.ビスフォスフォネート製剤の登場とWHI報告は,エストロゲンの骨粗鬆症治療薬としての位置付けを変化させつつある.ここでは,骨粗鬆症に対するHRTの効果を検証し,今後の方向性に触れると同時に,ビスフォスフォネート製剤の効果についても概説する.
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