臨床経験
変形性膝関節症に対するムコ多糖多硫酸エステルの関節内注入療法
藤本 憲司
1
,
上野 良三
2
Kenji FUJIMOTO
1
,
Ryozo UENO
2
1信州大学医学部整形外科教室
2奈良県立医科大学整形外科教室
pp.407-411
発行日 1972年5月25日
Published Date 1972/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908486
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はじめに
変形性関節症は膝関節に最も多発する.かつて信州大学整形外科で行なつた住民調査1)によると,40歳以上の農村男女1,114名中,臨床症状を有する本症が25.7%見出された.すなおち40歳以上では,4人に1人は膝関節症の症状を有するという結果をえた.外国においても,膝関節が第一の好発部位であることに変わりはない,例えばMohing2),によれば,膝関節症は全関節症の26.8%を占めて第1位であり,第2位の股関節の7.3%をはるかにひきはなしている.
さて本症の治療は,主として疼痛に対するものであるが,近年,内反または外反膝変形の強いものに対して,脛骨高位骨切り術(Bauerら3),その他)などの手術的療法が行なわれるようになつたが,大多数の症例に対しては保存的療法が指示される.保存的療法としては,温熱、運動療法などの物理療法が大切であることはもちろんであるが,膝関節は薬物の関節内注入療法がよく行なわれる部位である.そしてHollander4)の報告以来、副腎皮質ステロイド剤の間接内注入は,鎮痛ならびに貯留関節液の減少に著効を奏することが一般的に認められ、広く行われているが、いささか乱用気味であることは否定できない。ステロイド剤の関節内注入は内服とちがい,全身的副作用の心配はまずないが,長期間つづけると関節軟骨の変性を促進し,骨萎縮を引き起こし、さらには骨壊死を生じることもあるという.従つて長く本療法をつづけることは避けるべきであろう.
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