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酸性ムコ多糖蛋白複合体は結合織の重要な構成成分の1つであると共にコラーゲン線維形成,物質の透過,輸送,とくにCaイオンの平衡と沈着,水分の保持,浸透圧の維持,細菌感染に対する防禦などの機能を司どるとされ,結合織代謝の重要な担い手である.その基本単位は1個の蛋白部分とそれより枝状にのびた多糖鎖部分からなり,両部分の結合方式としてO-グリコシド結合とN-グリコシド結合が既に立証されている.多糖鎖部分の構成は酸性ムコ多糖の種類により異なるが,基本的には2糖くり返し構造で,2糖に1個の割合で硫酸基を有する.またアミノ酸と結合する糖部分については一般に2分子のガラクトースと1分子のキシロースが存在する.このように酸性ムコ多糖の一次構造はかなり明らかにされているが,個々の酸性ムコ多糖における構造の不均一性や多様性についてはなお不明の点が多く,前述の生理機能と共に今後具体的に解明すべき課題である.
酸性ムコ多糖の各種疾患における研究は,周知のように1957年Meyer, Dorfmanらによって始められ,Hurler症候患者尿にデルマタン硫酸の過剰排泄を発見以来,急速に進歩し,尿中酸性ムコ多糖パターンによる病変分類が可能となり,最近では治療えの応用が試みられている.しかしHurler症候を中心とした酸性ムコ多糖代謝異常症におけるめざましい発展に比べ,その他の結合織疾患における酸性ムコ多糖代謝の研究はいまだ少なく,その知見は寥々たる現状である.日本健康成人における尿中酸性ムコ多糖の排泄パターンは既定のことのように一般に考えられているが,事実はそうでなく報告者により区々で,最近教室の新名はこれを明らかにした.しかし乳幼児,老人におけるそれはいまだ決定的なものはない.
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