誌上シンポジウム 生物学的製剤が与えた関節リウマチの病態・治療の変化
緒言
木村 友厚
1
1富山大学医学部整形外科
pp.788
発行日 2011年9月25日
Published Date 2011/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102093
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関節リウマチ(RA)に対して確実な治療効果が期待できる生物学的製剤の登場は,RA治療を劇的に変貌させた.近代のRA治療が1897年のアセチルサリチル酸の合成から始まったとすれば,ここまで1世紀もの期間を要したわけである.疼痛改善を願った非ステイロイド抗炎症薬による治療,抗炎症を願うステロイドによる治療,そして免疫異常の改善を期待した種々の抗リウマチ薬による治療,といったまさに隔靴搔痒の対症療法に始終せざるを得ない長い時を経て,ようやくここに至ったわけである.
第一選択薬となったメトトレキサートによる免疫制御,そして特定の標的分子を制御する生物学的製剤が,RA治療にもたらしたものは計り知れない.この新時代のRA治療により,関節破壊の進行阻止や身体機能の改善・維持,さらには生命予後の改善も可能になったことは,既によく知られたとおりである.大幅な治療の進歩は,RAにおいて回復困難な機能障害を生じさせないためには,早期の診断と確実な治療介入が必要であることも示してきた.治療の進歩は,明確な治療目標がなく治療評価も十分ではなかったRA診療にも変革をもたらした.高い目標を設定しての治療とTight Controlの必要性,さらには達成された治療目標を維持することが重要なことも,明確になってきている.
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