誌上シンポジウム 整形外科術後感染の実態と予防対策
緒言
山本 謙吾
1
1東京医科大学整形外科学
pp.974
発行日 2009年10月25日
Published Date 2009/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101599
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近年の生体材料分野での著しい進歩に伴い,人工関節,脊椎インストゥルメンテーションなど大きな金属が体内に挿入される頻度が高くなりました.しかし整形外科手術は無菌的手術がほとんどであり,ひとたび術後深部感染が生じると治療期間の延長とともに大きな機能障害をもたらし,患者の精神的・肉体的苦痛,また医療経済面での損失も計り知れません.われわれは常にこの術後感染の危険性を念頭に置き,細心の注意を払いながら周術期の管理に臨まなければなりません.
米国予防疾病管理センター(CDC)より手術部位感染防止ガイドラインが発表されて以来,根拠に基づいた予防対策が国内外において論じられるようになりました.剃毛が否定され,手洗いが簡略化され,術後の抗菌薬投与が不要とされ,毎日の創消毒も不要といわれてきました.しかし多くの規制が緩むにつれ,人の動きがさらにこの規制ラインを低下させ重大な問題が生じることだけは避けなければなりません.手洗いの簡略化がやがて手洗いのいいかげん化に,創がドレッシングされたまま確認されず感染の発見の遅れに,ということがないよう注意しなければなりません.手術部位感染(SSI)予防の基本は周術期の清潔操作であり,すべてのスタッフが感染予防に対する高い意識を共通して持って行動することが重要であります.
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