誌上シンポジウム 腰椎前方アプローチ—その光と影
緒言
松山 幸弘
1
Yukihiro MATSUYAMA
1
1浜松医科大学整形外科学講座
pp.1088
発行日 2019年11月25日
Published Date 2019/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201504
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世界に先駆けて腰椎前方アプローチを行ったのは昭和8年,京都大学の伊藤弘教授で,対象は脊椎カリエスに対してであった.それ以後脊椎感染症や腫瘍に対して腰椎への前方アプローチは継承され,さらには脊柱側弯症や腰椎変性疾患,外傷に対しても応用されてきた.現在使用可能となっている大きなケージを使用して椎体間乖離と矯正,そして脊柱管の除圧も可能とする側方侵入腰椎椎体間固定(LLIF)が登場してからは,皮膚切開も縮小し,出血も少量で済む低侵襲化が可能となってきた.
日本における腰椎前方アプローチの歴史は長く,その長所,短所はよく理解されてきた.長所は直接椎体間を乖離でき,移植骨も比較的大きなものを入れることが可能であり,また脊髄高位では脊髄を前から除圧できる点にある.短所は大血管,腸,尿管など,障害すると生命を脅かす臓器が多く,術野が深くなり視野が悪い点であった.この短所は現在のLLIFが導入され,視野をよくする開創器が備わって,改善するかと思いきや,逆に合併症が多く発生しているように思える.
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