誌上シンポジウム 膝前十字靱帯のバイオメカニクス
緒言
前 達雄
1
Tatsuo MAE
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科)
pp.546
発行日 2018年7月25日
Published Date 2018/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201117
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膝前十字靱帯損傷は,スポーツ活動において頻度の高い外傷で,放置によって半月板損傷や軟骨損傷を生じ,変形性関節症性変化に至ることがわかっている.そのため,手術成績の向上を目指し,解剖学,生体力学,および生物学的な研究が多く行われている.ただ,靱帯自体および付着部の解剖学的研究が進歩したり,生物学的に治癒促進ができたとしても,その最終評価にはバイオメカニクスが必須で,それらの知見を臨床に応用できるかどうかの重要な判断材料となる.一方で「バイオメカニクス」はとっつきにくく,敬遠されがちな分野であるが,整形外科の診療を行ううえで切り離せないものであり,逆に,「バイオメカニクス」にどっぷりと浸かってみると受け入れられるかもしれない.「バイオメカニクス」という言葉は,「再生医療」のような新しさはないが,内容は常に更新され,最新の話題に対する答えも導き出してくれる.膝前十字靱帯に関するバイオメカニクスの研究は,その機能の重要性から多数報告されていて,整形外科の中では進んだ分野の1つである.脛骨に前方への荷重や回旋トルクなどを加えた際に生じる現象を計測する研究が多いため,それら手法が理解できれば自然と理解ができる.
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