視座
整形外科と疫学
西脇 祐司
1
1東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野
pp.787
発行日 2011年9月25日
Published Date 2011/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102092
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臨床医の日常は決断の連続である.この患者に今この投薬をすべきか否か,あるいは手術をすべきか,手術をするならA法が良いかそれともB法か,等々.そこでは,なんといっても自身の経験,そして先輩,同僚医師らの経験に基づくアドバイスが重要な羅針盤である.また,過去の知見が自分の症例に役立つかどうかの吟味もいまや大切なステップと認識されている.しかし,過去のエビデンスは常に不十分であり,臨床医の疑問に対する完璧な返答を与えない.一体この患者の予後はどうなるのだろう,本当にこの手術法に効果があるのだろうか,というように臨床医の悩みは尽きない.別の見方をすれば,日々の臨床の中に新たなリサーチテーマがごろごろしているともいえる.したがって,この山積する課題を解決したいと願う臨床医は非常に多い.
一方で,自分の整形外科臨床医時代を振り返ってみてもそうなのだが,その課題解決の,つまりは仮説の証明の仕方がよくわからないとお困りの臨床医が多いのも事実である.何をアウトカムにしたらよいか,どのように比較すべきか,何人くらい集めればよいのか?そこで疫学者の登場である.疫学というと,何千人規模の大規模研究ばかりを想定しがちだが,人を対象とする研究が疫学である以上,1例報告も立派な疫学研究である.つまり何のことはない,臨床医学の現場で実施される,動物や細胞実験以外の研究はみな疫学研究である.そこではもちろん統計学の知識を使うものの,もっと広く原因と結果の関係を推論するための方法論とお考えいただければよいかと思う.
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