文学漫歩
—深沢七郎(著)—『楢山節考』(1964年,新潮社 刊)
山中 英治
1
Hideharu YAMANAKA
1
1市立岸和田市民病院外科
pp.1674
発行日 2002年12月20日
Published Date 2002/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407905085
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聖路加国際病院理事長・日野原重明先生の著書が『生き方上手』をはじめ何冊もベストセラーになった.先生の提唱される「新老人運動」では,健康な老人はボランティアなどをして弱い人を助ける側に回ることを勧めておられる.病院や介護施設で働いていただければ高齢化社会にとって福音である.人生経験豊富な方々に,不安な気持ちでいる患者の話し相手になってもらうだけでもありがたい.
『楢山節考』では,寒村で若い者が生きていくために,食費を節減する目的で七十歳以上の老人は山に捨てる.主人公の老女「おりん」は七十前だが健康で体力もあり,魚穫りの技術や家事なども若者より優れている.しかしいくら有能でも例外は許されないし,何よりも自分で潔く山へ行くと決め,その日のための振る舞い酒や料理など準備万端にしている.かように賢くよくできた母親を,優しい息子はなるべく山には行かせたくない.較べて隣家の舅は役立たずで,家族にも嫌われているが生に執着し山へ行こうとしない.
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