文学漫歩
―織田作之助(著)―『六白金星』―(1950年,新潮社 刊)
山中 英治
1
Yamanaka Hideharu
1
1市立岸和田市民病院外科
pp.88
発行日 2003年1月20日
Published Date 2003/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101311
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占いの類はほとんど信じない.生まれ月(星座)や年齢が同じ人が皆同じ運勢であるはずがない.もちろん厄払いにも行かなかったが,厄年は結構良いことが多かった.弟の小学校時代の担任は,厄年に厄除けで有名な寺で祈とうしてもらった帰路に交通事故に遭い入院した.また先日は外来に他院での乳腺腫瘍の生検結果が癌で,手術が必要だと言われたが,祈とうの先生が癌ではないので拝んで治してやると言うのを,母が信じて困っているという娘さんが50代の女性を連れて来て,説得に苦労した.医師が誤診をしたら大騒ぎだが,祈とう師は大金を取って治らなくとも罪にはならないようだ.
とは言うものの正月のおみくじは好きだ.寒い朝に朱袴姿の,できれば色白肌で長い緑の黒髪の巫女さんから貰うのが良い.新年の暦の運勢も,つい読んでしまう.私の生まれ年は六白金星である.織田作之助の『六白金星』の主人公の楢雄も六白金星の生まれで「この年生まれの人は,表面は気長のように見えて,その実至って短気にて…」と書かれている.当たっているような気もするが,もし本当なら,私の学年は喧嘩が絶えないことになる.
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