カラーグラフ 腹腔鏡下食道手術・2
アカラシアに対する腹腔鏡下Heller-Dor法
森 俊幸
1
,
下位 洋史
1
,
杉山 政則
1
,
跡見 裕
1
Toshiyuki MORI
1
1杏林大学医学部第1外科
pp.929-935
発行日 2000年8月20日
Published Date 2000/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904165
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アカラシア
アカラシアは食道の神経異常症であり,食道の一次蠕動ならびに嚥下に対する下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)の弛緩反応の欠如を特徴とする.食道は種々の程度に拡張しており,輪状筋層の過形成は認めるものの,通常は器質的な食道狭窄は認めない.病理学的にはAuerbach神経叢の欠如または萎縮,ならびに食道壁内の神経線維の減少を認める.LESの弛緩反応を支配するVIPや他のペプチド原性神経支配の喪失がその病態であり,コリン原性神経支配は保たれている.病因は不明であるが,神経の原発性退行変性疾患とする説や,ウイルスなどの感染による説などが提唱されている.全身の副交感神経節細胞の破壊を特徴とするChagas病(Americantrypanosomiasis)でも,同様の病態を認める.
アカラシアの治療の目的は下部食道の機能的閉塞を解消することにあり,下部食道のバルーンによる拡張術と手術による下部食道筋層切開術(Heller筋層切開術)1)が広く行われている.カルシウム拮抗剤もLES圧を下げ,嚥下困難などの症状を軽減する効果はあるが,副作用や有効率などの問題があり,実用的とはいえない.
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