メディカルエッセー 『航跡』・42
モノ書きにも一寸の魂
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.758-759
発行日 2000年6月20日
Published Date 2000/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904136
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わたしのデスクに載った18インチモニターのスクリーンには,毎日何十通というメールが送られて来る.ひとつひとつ開くだけでかなりの時間をとられてしまう.学内の広報,講演会やカンファレンスの案内に加え,外部からのメッセージは,文字通り全世界から送られてくる.「手強い手術患者に貴殿の開発した手術をしたいが,テクニカルな詳細を教えろ」というのもある.開発途上国の小児外科医からは,先進国のスタンダードからするとなんでもない手術や術後のマネージメントについての質問が多い.身近なところでは,週末ゴルフのテイタイムを報せたり,古い友人からどうしていると言って来ることもある.それもこれも含めて,1日平均50通のメッセージを全部読むには気骨が折れる.
メッセージはひとまずニッポン語と英語に分けたあと,ニッポン語のメッセージから開いて読むことにしている.多くは返信を要する用件なので,英語環境で使えるニッポン語ワープロを使って,返信をタイプする.ニッポン語で頻繁に入ってくるメッセージは,何と言っても各誌編集部からの原稿の催促である.月の中ごろには時候の挨拶からはじまって,原稿のこともお忘れなく,というやんわりしたフレーズで結んである.だんだん締め切りが迫ってくると,じわじわ圧力を帯びた表現が混じってくる.
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