臨床外科トピックス 消化器外科領域におけるサイトカインとその周辺・8
臓器移植とサイトカイン
若林 剛
1
,
島津 元秀
1
,
白杉 望
1
,
市東 昌也
1
,
河地 茂之
1
,
隈元 雄介
1
,
吉田 昌
1
,
唐橋 強
1
,
北島 政樹
1
Go WAKABAYASHI
1
1慶應義塾大学医学部外科
pp.1463-1469
発行日 1994年11月20日
Published Date 1994/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901717
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
臓器移植における重要な生体反応として,免疫反応と炎症反応が挙げられる.前者は移植片拒絶反応の主要な部分として,また後者は,拒絶反応の最終段階や primary graft nonfunctioning(PGN)における虚血—再灌流障害の発生機序として,無視することのできない重要な生体反応である.この両者はいずれもが,主に細胞間の情報伝達をつかさどるサイトカインと呼ばれる可溶性因子によって調節されている.
一般的にサイトカインは分子量数kDaから数10kDaの糖蛋白であり,その作用発現は受容体との結合を介して行われる.リコンビナント蛋白を用いた研究から明らかになったこれらのサイトカインの特徴は,その機能の多様性と重複性である.すなわち,1つのサイトカインは種々の異なった細胞を標的として広範な生物活性を発現しうるし,いくつもの異なったサイトカインが1つの標的細胞に対して非常に類似の作用を発揮することができる.したがって,1つのサイトカインは,他のサイトカインと協調的に,あるいは相反的に関与しながら,いわゆるサイトカイン・ネットワークを形成し,その作用を発現している.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.