特集 現代医学・生物学の仮説・学説
6.免疫学
サイトカイン
田中 敏郎
1
,
岸本 忠三
1
1大阪大学医学部第3内科
pp.578-581
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900652
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概説
生体は細胞間で情報伝達することによってそのホメオスターシスを維持している。異物が生体内に侵入すると,免疫担当細胞といわれる細胞間での膜間接触もしくは可溶性因子を介して情報が伝達・増幅され,異物を排除するための防御反応が惹起されることとなる。この細胞間情報伝達の中心的な役割を果たすものが,サイトカインと総称される液性因子である。
1965年,活性化リンパ球の培養液中に,リンパ球の増殖を誘導する因子が存在することが報告され1,2),続いて抗体産生にT・B細胞の相互作用が必要であることが明らかとなり,T細胞の培養液中にB細胞の抗体産生細胞への分化を促す因子が存在することが示された3-5)。これらが,サイトカインの存在を示唆した最初の報告であるが,1970年代後半より,生物活性に基づく液性因子の生化学的な精製がなされ,種々の因子が種々の名称で報告された。1980年代に入ると,遺伝子工学の進歩にともない,ほとんどすべてのサイトカイン遺伝子がクローニングされ,その塩基配列が明らかとなった。そのことによってリコンビナント分子が大量に純度よく得ることが可能となり,それを用いた一連の研究により,後述するサイトカインの特徴である作用の多様性と重複性が明確に示された。
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