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最近の消化器外科学は臨床および研究の面において大きく変遷してきたことは否定しえない事実である.すなわち,臨床面において特筆されるべきことはminimally invasive surgeryの導入による腹腔鏡下手術の確立であり,一方,研究面においてはmolecular biologyの進歩と相まって,疾患のbiological behaviorの究明を目的とした癌遺伝子,また各種病態の解明における一連の蛋白群の同定が可能となったことである.その中でも,近年,消化器系学会の主題や雑誌の特集に取り上げられるのがサイトカインである.それ故,逆に考えると,サイトカインは時代のneedsに合った最もup-to-dateな研究の焦点であるといっても過言ではない.
過去数年の研究により,サイトカインは細胞内の情報伝達に関与する蛋白であることが証明され,病態の解明に避けて通ることのできない物質となった.すなわち,サイトカインはautocrine, paracrineの作用を有し,他の細胞の活性化,増殖,分化を促し,単球(Mo)やマクロファージ(MΦ)から産生されるモノカインと,リンパ球から産生されるリンフォカインに分類される.これらはサイトカイン・ネットワークを形成し,免疫応答,炎症反応あるいは造血作用を司っていて,生体のhomeostasisを保っている.
はじめに
サイトカインは,免疫担当細胞をはじめとして種々の細胞から産生される,きわめて微量でその効果を発揮する(糖)蛋白性の生理活性物質で,細胞の分化増殖,あるいは抑制を通じて生体の恒常性の維持に必須の物質である.例えば免疫系や造血系の活性化調節に重要な働きを示す.さらに炎症性サイトカインは炎症の経過に関与し,炎症からの回復に一役を担っている.
サイトカインはインターロイキンやインターフェロンを代表として数多く存在し,その作用には重複するものが多い一方で,作用を発揮するためには細胞表面の特異的レセプターに結合する必要がある.内分泌(endocrine)ホルモンは,ある特定の組織でつくられ体内の様々な細胞に作用して代謝を調節するが,サイトカインは,自己分泌(autocrine)あるいは傍分泌(paracrine)という形で自己細胞あるいは近くの細胞に作用する.しかし,敗血症性ショックでの異常に高値の血中サイトカインはendocrine的に体内の広範囲で作用していることがうかがえる.
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