特集 骨盤内悪性腫瘍の機能温存手術
〈婦人科〉子宮癌手術に対するコメント
浜野 恭一
1
Kyoichi HAMANO
1
1東京女子医科大学第2外科
pp.1407-1408
発行日 1993年11月20日
Published Date 1993/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901415
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子宮癌手術に対する機能温存手術に関するお二方の論文を読ませて頂いた.婦人科手術の詳細については理解できないのは当然であるが,直腸癌に対する機能温存手術を行っている外科医の立場から,少し述べさせて頂きたいと思う.
歴史的にみると,直腸癌に対する機能温存手術は,従来,自然肛門温存術,すなわち低位前方切除術の適応拡大に主眼が置かれていたといえる.機械吻合,特にdouble stapling techniqueなどの導入により,この問題がほぼ解決した1980年代に,神経温存手術が新しいテーマとして登場してきたわけで,比較的新しい分野といえる.それまでは,拡大郭清すなわち上方向は下腸間膜動脈起始部にはじまり,側方向は内外腸骨動脈に沿って徹底的なリンパ節郭清を行う方法が主流であった.神経温存手術が取り入れられた背景には,患者のQOLの向上はもちろんであるが,現実的には,リンパ節転移のない症例にも,数多く拡大郭清が行われて機能を損なっていたという反省もあったわけである.したがって,後述するように,種々の画像診断を駆使して,癌腫の深達度,リンパ節転移の有無などを術前に把握する試みがなされ,この方面では大きな進歩が生まれた.この結果,現在では,術前に神経温存手術の適応が,かなり正確に決定されるようになったといえよう.
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