特集 保存的治療の適応と限界—外科から,内科から
自然気胸
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於保 健吉
1
,
中村 治彦
2
1大船中央病院外科
2東京医科大学外科
pp.1624-1625
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900287
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自然気胸の治療方針については従来からさまざまな意見がある.もちろん,びまん性肺疾患が原因となった気胸や,低肺機能,全身状態不良,手術拒否などの理由で手術が必然的に禁忌となる症例は,保存的治療に専念する以外に選択の余地がなく,一方,長期肺虚脱のため臓側胸膜が肥厚し再膨張に剥皮術を要する症例,重篤な血気胸例,ドレナージやその他の保存的療法が無効に終わった症例などが手術の絶対的適応となることに異論はないと思われる.しかし,日常遭遇する自然気胸の大多数の症例は保存的療法も手術療法もどちらでも選択し得る症例であり,これらの症例に対する治療法が論議の対象となっている.
自然気胸に対する各種治療法の適応を根治性という点に着目して比較すると,手術療法後の術側再発が5%以下であるのに対して,保存的療法後の再発は25〜50%と報告されており,明らかに前者の成績が優れている.何にもまして根治性が優先されるべきであるという治療哲学のもとに,保存的治療には重きを置かず,初回発症時から一貫して手術を第一選択として行っている施設もみられる1).また,予防的観点から10歳代の症例や対側にブラを認める20歳代の症例に対しては胸骨正中切開で両側開胸し,健側肺をも検索し,両側のブラを同時に切除する方式を採用している施設もある2).この場合,手術侵襲は一側開胸より大きくなるが,患者は健康な若年者が多いためか,重篤な合側症はみられないという.
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