特集 保存的治療の適応と限界—外科から,内科から
心筋梗塞
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川島 康生
1
,
中埜 粛
1
1大阪大学医学部第1外科
pp.1601-1602
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900281
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急性心筋虚血に対する治療内容は,近年,内科側における血栓溶解療法(ICT)1)や経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)の普及2),さらに外科側における手術成績の向上3)や補助循環法の進歩4)などにより大きく変遷してきた.特に最近,心筋梗塞急性期における緊急ICTやPTCAの導入により梗塞後早期の心筋のre-perfusionが可能となり,これにより救命される症例が増加しつつあることは周知の通りである.豊富な経験を有される延吉先生の論文において,このことは如実に示されている.
急性期心筋梗塞に対する治療の最大の目的は,可能な限り早期に冠血流を再開することにより閉塞冠動脈領域の心筋壊死を救い,また,心筋梗塞の拡大を防止することにある.急性期心筋梗塞における心筋のsal-vageは一般に発症後3〜6時間以内が限度とされており,かつ左室機能の回復程度は冠血行再建に要するまでの時間に依存するとされている5).そのために緊急冠動脈造影を施行後,まず内科的にICT およびPTCAによる閉塞冠動脈の再灌流を図り,残存病変に対し不安定狭心症に準じてA-Cバイパス術を施行することが多い.この点に関して順天堂大学胸部外科の細田先生の論文の中で明確な治療方針が示されており,準緊急あるいは待期的手術によって良好な結果が得られている.
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