特集 保存的治療の適応と限界—外科から,内科から
急性胆嚢炎
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寺田 正純
1
,
土屋 凉一
1
1長崎大学医学部第2外科
pp.1504-1506
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900257
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急性胆嚢炎の治療方針に関しては,緊急的に胆嚢摘出を行うべきという意見と,内科的治療(輸液,抗菌剤,胆嚢ドレナージ)にて急性炎症期を回避し,待機手術にもっていくべきという意見に分かれている.それぞれ理由があるが,前者では急性期手術でも死亡率は低いこと,患者の入院期間,費用が少なくてすむことなどがあり,後者では患者の全身状態を改善せしめうること,技術的困難さや出血を伴う急性期の手術を避けうること,術前に胆道系および他臓器の十分な検索が行えることなどである.いずれにしろ,手術の必要性に関しては異論はなく,また両者間に手術成績の差はない.
一方,近年の各種画像診断や胆道感染に有効な抗菌剤の発達により,急性胆嚢炎は内科的疾患として初期に発見され,早期に治療が開始されるようになったため,それ自体は恐ろしい疾患ではなくなった.しかし,症例によっては胆嚢周囲膿瘍,胆汁性腹膜炎,膵炎,肝膿瘍,敗血症などの合併症をひき起こし,高齢者やリスクの高い患者ではショック,DIC(汎発性血管内凝固症候群),MOF(多臓器不全)など重篤な病態へ移行する可能性があるので注意が必要である.千葉氏らの論文も武藤教授の論文も,このような臨床症状の推移やUS所見を重視し,胆嚢穿孔が示唆される症例では緊急手術の適応であるとした.
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