Japanese
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臨床研究
開腹術後早期の癒着性イレウスについて
Adhesive small bowel obstruction in the early postoperative period
豊島 宏
1
,
坂東 隆文
1
,
磯山 徹
1
Hiroshi TOYOSHIMA
1
1日本赤十字社医療センター消化器外科
pp.1009-1012
発行日 1990年8月20日
Published Date 1990/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900162
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はじめに
開腹手術に起因する癒着性イレウス1,2)は,近年,漸次減少の傾向にあるといわれている3,4).これは,麻酔の進歩や新しい縫合材料の開発による閉腹手技の向上,抗生物質の発達による感染の予防等によるものと考えられるが,積極的な保存的治療により手術症例が減少したといった因子も考慮する必要があろう4).一方,開腹手術症例の増加や拡大手術の日常化等,今後本症を増加させる要因もあり4),この予測しにくい術後合併症の予防と治療成績の向上のため,一層の努力を払う必要がある.
癒着性イレウスは,術後のあらゆる時期に発症するが,術後早期のものでは,初回の手術侵襲から完全に回復していない時期に当り,とくに高齢者やpoor riskの症例では,栄養管理が発達した現在でも生命の危険は増大し,入院期間も延長する.診断の困難な症例もあり,再手術を行うかどうかの判断も難しい.著者らは当科で施行した胃癌,消化性潰瘍,胆石症,大腸癌等の手術症例にみられた術後早期の癒着性イレウスについて,原疾患手術別の発生頻度,症状の発現時期による特徴,開腹所見,治療成績等についてretrospec-tive studyを行い,本症の臨床的特徴や合理的治療法等について検討した.
術後早期の基準としては2週間以内5,6),30日以内7〜10),6週間以内11)等があるが,ここでは30日以内とした.
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