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筆者が医師になってから30年経つ.この間,医師を取り巻く環境が大いに変化してしまっていることは間違いない.どちらかというと残念ながらより厳しくなっていると感じている.しかも,外科を取り巻く状況がより厳しくなっている.その当時,外科はメジャーな科であり,どの大学もおそらく出身者の2割ないし3割は外科医をめざしたものと思う.今は人数的にはマイナーな科となってしまっている.ある統計によれば,1994年の医師数を1とした場合,外科が最も減少しており,2014年には0.81であったと報告されている.また,厚生労働省医師調査によれば,医師100人中,外科を標榜しているのは現在ほぼ3人に過ぎない.医学の王道と自任していたが,この事態は真摯に受け止めなければならない.その要因として様々なことが考えられるが,外科医の労働環境の劣悪さが一つとして挙げられる.別の統計によれば,週60時間以上勤務する医師の割合が最も多いのが外科とされている.科の特性上やむをえない面もあると思うが,やはり,それに見合うものがないと若手(今は初期研修でほとんどの科の実態を知ってしまう)は魅力は感じてくれても,めざすのは躊躇してしまうのではないだろうか.
本特集にもあるように,ビッグデータを活用できる,活用しなければならない時代になっている.これも30年前には想像もつかなかった事態である.多くのビッグデータの中でも2011年に登録開始されたNational Clinical Database(NCD)は格別である.設立さらにその後の発展に尽力されている先人,また日ごろ忙しい合間にデータ入力されている現場の先生方に心より敬意を表したい.それらをいかに臨床に活用していくか,本特集は見事に具現してくれている.現場でも大いに参照していただきたい.このせっかくのお宝をこれから,外科医のためにどのように活用していくかが次なる課題になるものと考えている.秀逸なわが国の外科医の仕事を高いエビデンスレベルのもと,適切に評価でき,それが外科の活性化につながることを大いに期待したいし,そうしなければならないと感じている.
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