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『臨床外科』の編集委員に加えていただいて数年が経過し,いろいろ学ばせていただきました.このような雑誌はやはり「商品」としての宿命は免れず,魅力がある内容で読者の購買意欲を掻き立て,多くの部数を購入していただいて収益を上げないと生き残れません.医学雑誌の各号が売れるか否かは,しばしばその主たる内容である「特集」で何が取り上げられているかにかかっています.そして,自分が提案した特集が「当たった」かどうかはその号の実際の販売実績に直接反映されるので,後日赤裸々にわかってしまいます.自分が「特集」を企画した号の売上げが今一つであった場合には,出版社や編集委員仲間を前にひたすらこうべを垂れるしかありません.これまでの様々な外科系雑誌の販売実績を考えると,どうやら確実に売れるのはヘルニアかヘモの特集です.しかし,それがわかってはいても,いつもそれではね……と頭を悩ませるところです.
さて,今回の「特集」ですが,「縦隔を覗き,さらにくり抜く」というかなりマニアックな領域に手を出してしまいました.果せるかな,集まった原稿は私から見れば実に素晴らしいものばかりですが,ちょっと専門的すぎる側面もあるかもしれません.しかし,今や食道胃接合部癌は,頻度は低いもののどこの病院でも確実に見つかる病気となってきております.できればきちんとした手術を提供したいものですが,頻度が低い疾患への対応は誰しも不慣れですから,事前にしっかりと勉強して臨むしかありません.この特集号の一部は最近注目されている新しい術式に触れており,すぐに皆様のお役に立つ情報ではないかもしれません.しかし,残りの多くは食道胃接合部癌の手術の前にぜひ勉強していただきたい内容です.どうか,読者の皆様におかれては,本特集号をお役立ていただければと思います.また,ご購入のうえでお取り置きいただき,来年か再来年に実際に症例と遭遇したときにお読みいただいても,十分にお役に立つであろうピカピカに新しい内容です.その時期に新たにこのような特集を組むのはおそらくむつかしいと思いますし,バックナンバーも売り切れていることと思いますので,ぜひこの機会にお買い上げいただければ幸甚です.
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