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あとがき
小寺 泰弘
pp.604
発行日 2024年5月20日
Published Date 2024/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214544
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手術を教えるというのはどういうことか.等間隔に死腔をつくらずに縫合すること,結紮終了後に糸を適切な長さで素早く切ること,肝臓鉤などで適切に視野を確保すること,閉腹時の結紮が緩まないこと,術野で迅速かつ確実な結紮ができること,このあたりが自分の外科研修医時代に順に学んでいったことであった.そのうちに胃外科の専門医となり,手術の手順や各局面で術者,助手が担うべき役割などを若手と共有する教育方法となった.他の領域でも同じようにon the job trainingで開腹・開胸での手術技術が伝承されていったものと思われる.教える側としては確固たる技術の伝授法や育成法を身につけているわけではなく,自分が受けた教育を思い返しながらよりよい方法があればそれを取り入れて次世代を育てていく感じだろうか.
しかし,現代では手術に入らなくても多くのビデオ教材が手に入る.パソコンの画面で見ても手術室のモニターで見ても中身は同一である.また,ラパロの技術を身につけるにしてもトレーニングボックスや各種シミュレーターもあり,糸結びの練習くらいしかできなかった時代とはわけが違う.このように学びの方法が多様化しているうえに,遅まきながら外科の教育方法をひとつの学問として捉える人たちも出てきている.本特集ではそのあたりの知見を整理してみた.
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