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あとがき
田邉 稔
pp.128-128
発行日 2018年1月20日
Published Date 2018/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211925
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海外の低侵襲手術トレーニングセンターに腹腔鏡下肝切除の講師として招かれることがある.半分は座学で,残りは大動物を使用した手術実習というのが一般的なパターンである.大きなトレーニングセンターでは時に40か国以上の国々から集まることもある.参加者のほとんどが30歳代の若手外科医であるから,やる気満々なところは共通しているのだが,大動物の手術トレーニングとなると国民性の違いが顕著に出るところが面白い.基本的に欧米は突進型でアジアは緻密計画型と以前は思っていたが,同じ肌の色をしているアジアのなかでも極めて多様性がある.あくまで一般的傾向であるが,中国や韓国からの外科医は勇ましい.出血や失敗を恐れずどんどん手技に挑戦するが,講師のわれわれから学ぶ姿勢はまったくない.何かアドバイスしようとしても,だいたい訳のわからない返事が返ってきてうまくかみ合わない.出血多量であっという間に動物をダメにしてしまうことも珍しくない.その対極に位置するのが日本人である.常に隣にいる講師に何をやったら良いか問いかけるし,教えたことを一生懸命試そうとする.良くも悪くも従順な国民性であり,技術の吸収率は極めて高い.しかし,学会場においてはこれが裏目に出る.教室の若い先生達に,「もっと質問をして目立て!」と刺激するが,だいたい会場の一番後ろのほうでじっとしているし,自分の発表が終わると帰ってしまう若者が多い.次の世代で日本の外科を牽引する人物は誰か? 部下達には,配慮に富むが主張の強い刺激的な外科医に育って欲しいと願い,腐心する今日この頃である.
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