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あとがき
田邉 稔
pp.1314-1314
発行日 2016年10月20日
Published Date 2016/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211338
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今から20年以上前,私が駆け出しの肝胆膵外科医として修練を積んでいた時の話を紹介します.言わずと知れた大手術,膵頭十二指腸切除の術者としてのチャンスが回ってこようものなら,「今度こそは美しい手術を」といきり立って臨んだものです.そんなある日,手術の指導をしてくださっていた島津元秀先生が私に向かって言われた“名言”があります…「膵頭十二指腸切除はヘルニア手術に似たり!」.つまり,膵頭十二指腸切除は複雑な大手術ですが,解剖を理解して一つ一つ手順を進めれば美しい手術になるという点でヘルニア手術に似ている…という意味です.
外科を志す者が初めて教わる手術の一つが鼠径ヘルニア手術です.ヘルニア手術は将来どんな大外科医になるとしても,必ず経験しなければなりませんし,逆にこの手術を美しく出来なければ,その後学ぶ多種多様な手術もいい加減になってしまうことでしょう.鼠径部の解剖は複雑であり,これを熟知したうえで正確な手術を行うことは必ずしも容易ではありません.さらに最近では,McVay法をはじめとした従来法に加え,様々なメッシュの開発や腹腔鏡下手術の登場により,ベテラン外科医でもこれらの特徴を把握し,使いこなすことが難しくなってきています.本特集では,common diseaseである鼠径部ヘルニアに焦点をあて,疾患の分類や特徴,手術に必要な臨床解剖,様々な手術法や困難症例への対処法まで,明日の臨床に役立つ知識や技術を最前線で活躍するエキスパートに解説していただきました.若手外科医の座右の書となることを願っております.
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