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本号は漢方薬の特集である.おそらく読者の中で,漢方を処方した経験がない医師は皆無と思う.いまさらなぜ特集かと思われる読者も多いかもしれないが,各稿を読んでいただければ,その理由は即座にご理解いただけるものと思う.漢方薬は経験に基づくものと考えられがちであるが,最近の研究はその薬効機序を明らかにしてくれている.また,最近の周術期管理,化学療法施行時,緩和ケアなどでいかに重要な薬剤であるかも明確に記述していただいている.各論からもわかるように,外科の臨床現場で使用される薬剤はそれほど数多くない.ぜひ,本号を読んでいただいた後には,記憶の片隅においていただき,該当する症例を診療する際に,ガイドブックとして本号を活用していただければ望外の喜びである.
漢方に関する数字をいくつか紹介したい.河野透先生も記述されているが,平成27年度薬事工業生産動態統計年報によれば,漢方製剤の年間生産額は約1500億円であり,対前年度比で5.7%の伸びを示している.全体に対する構成割合は2.3%であるが,活用頻度が増していることはその額からも類推される.日本漢方生薬製剤協会が行っている漢方薬処方実態調査2011によれば,漢方製剤を使用している医師は89%に達している.読者にはいないと思うが,もし漢方処方経験のない外科医がいればぜひ本号から,その活用方法・意義を学んでほしい.また,2008年の調査では漢方薬を処方する理由の上位として,「西洋薬で効果がなかった症例で漢方薬が有効」「患者さんからの要望」などが挙げられている.また,漢方薬単独での処方は少なく,西洋薬との併用が約8割となっていることも明らかになっている.それにしても,西洋薬との併用処方が認められているのは唯一わが国だけであるとは少々驚きであったが,ぜひその特権を活用していただきたいものである.
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