--------------------
あとがき
小寺 泰弘
pp.1278
発行日 2019年10月20日
Published Date 2019/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212640
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
かつて傷が小さいのが売りであった腹腔鏡下手術は,拡大された上質な映像を駆使して開腹手術より精緻な手術を行う手段に発展した.腹腔鏡下という制約もあり,吻合,縫合にはステープラーが頻用されているが,こうした器械のentry holeの閉鎖にはsuturingが用いられることが多い.しかし,suturingが苦手でもロボットを使用すれば嘘のようにきれいな縫合が可能となっている.それ以外の局面でも腹腔鏡下手術には特有の制約があることから,ロボットは十分に腹腔鏡下の手技を修得していない医師が低侵襲手術を行うためには格好のツールであると,欧米では評価されている.さらにFirefly imagingを用いれば炎症性瘢痕の中で安全に胆管を同定できたりする.まさに外科医の足りないところを補う道具である.
しかしわが国では,ロボットのおかげで何とか腹腔鏡下の手技が行えるというレベルの外科医はロボットには触らせてもらえない.どうも釈然としないので,これをアメリカ人に訴えると,一様にcrazyだ,本来のロボットの趣旨ではないという意見が返ってくる.それもそのはず,ロボット発祥の地においては「ちょっとしたトレーニングコースを受ければ,明日から君も一流のラパロ医だ」というのがロボットの売りなのだ.試しにロボット支援手術担当であるという米国人医師に,君は腹腔鏡下手術でゴッドハンドだったの?と聞くと,「いや,腹腔鏡下手術はあまりやってなかったんだけど,〇×病院でロボットのトレーニングコースを受けてきたんだよ」と答える.そんなものなのだ.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.