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あとがき
小寺 泰弘
pp.756
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104633
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本号では,胃癌腹膜転移の治療について特集しました.胃癌治療ガイドラインを見る限り,根治をめざす手術がその治療アルゴリズムに入り込む余地はありませんが,実際には症例を選んでかなり頑張っている外科医がいるのも事実のようです.そして,喜ばしいことに,CY1症例を始めとする軽微な腹膜転移例では,一定の頻度で治癒も望める時代が到来しました.
その一方で,近年わが国では,手術を主役としない癌の治療法の開発は腫瘍内科医の手にゆだねられるようになりました.しかし,腫瘍内科医の最も重要な役割の一つは新規薬剤の開発であり,そこではタイムリーで厳密な効果判定が必要です.測定可能病変を有さないことが多い腹膜転移の治療は,その観点からも彼らの仕事の中心にはなりにくいものです.また,新薬の開発を通じて腹膜転移の治療にbreak throughが生まれることを期待するのは,現時点ではまだ現実的ではありません.これに対し,腹腔内投与は薬物投与経路における工夫に過ぎませんが,既存の抗癌剤を用いて行っても工夫次第で相当な成果をあげる可能性がありそうです.しかし,腹腔リザーバーを含め,装着・管理に外科的手技を要する医療機器は,洋の東西を問わず腫瘍内科医にとっては足かせのようです.このような理由から,外科医は切除する技術を提供するだけでなく,癌の集学的治療に積極的に参画し,特に胃癌腹膜転移の治療法の開発については腫瘍内科医の理解を求め,協力して進めていく必要があります.
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