- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
医療者と患者の言葉にはギャップがあるとよく言われ,それらを指摘する書物も出版されている.一方,言葉は薬にもなると言われ,その類の書物も出版されている.われわれはそのことを肝に銘じておくことが大切である.もっとも医療者と患者との間で乖離がある言葉の一つがショックであると記されている.医学的には,血圧低下に代表されるvital sign低下の循環不全を意味するが,一般的には感情的ダメージを指す.小生の身近な場でもいくらでも起こりうる.肺炎の患者さんやご家族を目の前にして,原因は「ゴエン」ですね,と言うと,まず一般の方々は「御縁」と思いキョトンとされるかもしれない.それくらい違うのだということを知る必要がある.
術後障害に関しても,そのくらいの違いがあることが本特集を読むとよくわかる.できれば,後半の各論を読んでいただいたあとに,前半の総論(QOL,精神的・心理的サポート)を読み直してほしい.各論を理解し実践することが必要条件であることは自明のことであるが,それをいかに上手に行うか(患者さんに理解してもらうか)も,実は医師の重要な力量であることがわかっていただけると思う.若い時期はえてして技術論に重きを置きがちであるが,それをうまく活かすためには,患者さんとのコミュニケーションも重要であることを再認識していただければと思う.悪性腫瘍根治術においては臓器損失が必発であり,それに起因する術後障害が少なからず発生する.本特集でも指摘があるように,ともすると退院後外来フォローアップ中における術後障害は軽視されがちな傾向がある.患者さんにとっては,癌根治(再発の有無)とともに大きな問題であり,術後フォローアップを担当する外科医は,これら術後障害にも真摯に取り組む必要があるのである.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.