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ビルロートの時代には術死させないことが胃切除術の課題であったわけですが,その後,現在でも未解決であり続けている胃外科のテーマとして,至適な再建法があげられます.あくまでも個人的な印象ですが,胃食道逆流などによる著しい症状さえ惹起しなければ,患者さんのQOLには術後早期の食欲低下の影響が大きく,その程度や緩解するまでの日数については個人差があるように思います.ここでは外科的手技云々よりも,グレリンなどの生理学的な研究成果を臨床にfeedbackすることの方が効果的なのかもしれません.とは言え,噴切後の逆流性食道炎だけは本当に厳しいものがあります.この点で滝口先生のダブルトラクト法と二宮先生の観音開き法は,先日某企業の講演会で対決が組まれていたほどホットな話題ですし,他にも興味深い方法があります(今本先生).胃全摘術については,瀬戸教授の力のこもった総説を拝見する限り,Roux-en-Yをやっておきさえすれば当面何も問題がないようです.その一方で,池田先生のように「パウチを作成しないなんて考えられない」という狂信的なパウチ愛好家もいます.丑年に届いた彼からの年賀状では,牛の絵の腹部にパウチが作成されていました.工夫をすれば,腹腔鏡下でパウチを作成することも可能です(福永先生).さらに幽門側胃切除後にもパウチ派の先生がおられます(藤村先生).しかし,幽門機能がなくても容積さえあれば貯留するのか,そしてそれがゆっくりと十二指腸に流れるのかなど,素朴な疑問も生じます.愛好家のone armでのデータでは説得力に欠けますので,今後は再建法についてもランダム化比較試験を行おう(有上先生)と考えると,それでは何を指標に勝ち負けを決めるのか(宮崎先生)というところで熟考を要します.再建法の優劣の指標とすべく苦痛や侵襲を伴う検査が数多く行われた時期もありましたが,ある研究会で私の尊敬する某先生が「検査を受ける患者本人に何のメリットもない(検査を受けても研究者のデータになるだけで,症状が改善するわけではない)ではないか」と一喝され,一同が静まり返ったことがあります.近年,低侵襲な検査法も工夫されています(漆原先生)し,確立された質問票による患者アンケートも指標となりうる中,わが国でもPGSAS-45,DAUGSなどいくつかの質問票が開発されてきました(中田先生,高橋先生).再建術式のエビデンスを得る臨床試験を行うのに,まさに機は熟したのかもしれません.胃切除後の患者さんのQOL向上を願ってやまない先生方による今後の研究成果に,大いに期待したいと思います.
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