Japanese
English
特集 消化器良性疾患の手術適応—最近の考え方
消化性潰瘍
Conservative management and surgical indication of peptic ulcer
青木 照明
1
,
柏木 秀幸
1
,
秋元 博
1
Teruaki AOKI
1
,
Hideyuki KASHIWAGI
1
,
Hiroshi AKIMOTO
1
1東京慈恵会医科大学第2外科
pp.477-485
発行日 1989年4月20日
Published Date 1989/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210329
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今日,H2—受容体拮抗剤(以下H2—RA)が消化性潰瘍の保存的治療の中心となってきている.その高い治癒率により,全国アンケート調査によるH2—RA導入前後5年間の比較では,手術症例は前期49,132例より後期27,390例と44.3%の減少が認められた.しかし,合併症潰瘍症例は前期22,962例より後期19,826例と13.7%の減少であり,手術例の減少は,主として難治性潰瘍としての相対的手術適応症例の減少によるものであった.
H2—RAによる消化性潰瘍治癒率は,胃潰瘍で69.3〜84.4%(内服8週後),十二指腸潰瘍で68.1〜82.2%(内服6週後)であるが,胃潰瘍の25〜27%,十二指腸潰瘍の10〜15%がH2—RA抵抗性潰瘍となる.より完全な酸分泌の抑制により潰瘍治癒率は向上するが,治療中止後の再発率は6ヵ月で胃潰瘍17〜70%,十二指腸潰瘍50〜90%と高く,症例により,間歇療法または維持療法の選択が必要である.維持療法の適応症例で,長期にわたる服薬が困難な症例が外科治療の適応であり,永久的維持療法にふさわしい術式の選択が必要となる.反面,重篤併存疾患を有する高齢者では手術そのものの適応がなく,維持療法の継続が心要である.
合併症潰瘍に対する外科治療の適応は,原則的には変化がない.出血性潰瘍については,内視鏡的止血法などにより,緊急手術を避けることが望ましいが,手術のタイミングを逸することがないように注意が必要である.
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