特集 がん・画像診断の死角
大腸
大木 繁男
1
,
土屋 周二
1
1横浜市立大学医学部第2外科
pp.70-87
発行日 1985年6月20日
Published Date 1985/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209025
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はじめに—大腸の場合—
がん画像診断の死角という題で今度企画が組れたことは今まさに画像診断の急速な進歩が起こりつつある現在,時宜を得たものであろう.最近はまた本邦においても大腸癌の著しい増加もあり大腸癌の診断や治療法が外科医の関心の的となつている.
ところで,ここで「画像診断の死角」という主題の死角とは何か,その語義を調べてみたい.広辞苑によれば鉄砲の射程内であるが他物の障害及び鉄砲の構造上どうしても射撃し得ない区域,遮蔽物のためある角度から見ることができない地点となつている.そこで大腸の画像診断において死角とは何かと言えばそれぞれの検査法で見ることができない範囲,診断困難な部分さらに拡大解釈して比較的見落としやすい盲点と理解してよいと思う.しかし例えば下血の症状があり大腸癌と疑つて注腸X線検査をするときその存在診断は外科医にとつてそれ程困難なことはない.それでは一体大腸癌はその存在診断だけで良いであろうか.最近では大腸癌の手術でも癌に対する根治性を少しでも向上させるために広範なリンパ節郭清を行うことも一般的なことになつている.隣接臓器へ浸潤する癌ではこれらの臓器の合併切除や骨盤内臓器全摘術も行われている.一方直腸癌では癌の根治性だけでなく排便,排尿機能や男性の性機能を温存する手術も工夫されている.そこでいろいろの手術術式を選択するためにも大腸癌の検査では予後を左右する因子をできるだけ多く詳しく術前に診断できることが理想である.
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