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特集 食道静脈瘤手術
シャント手術の適応と術式
選択的遠位脾腎静脈シャント術
Selective distal splenorenal shunt
磯松 俊夫
1
Toshio ISOMATSU
1
1札幌逓信病院外科
pp.201-206
発行日 1982年2月20日
Published Date 1982/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207889
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はじめに
食道静脈瘤の治療は今日なお論議の多い分野である.現在行われている多くの術式が共通に目ざしているのは,食道静脈瘤形成に関与する遠肝性副血行路の郭清である.しかしそれのみでは消化管壁の静脈網の発達が著しく1),当然それを通じて静脈血の逆流が起こるため食道静脈瘤の消失が得られないので,消化管の離断再縫合を行うか,残された一本の胃静脈を系統静脈に吻合することによつて食道静脈瘤の消失をはからなければならない.前者の代表的術式として食道離断術2),胃上部切除術3)があり,後者の代表的術式として左胃静脈下大静脈吻合術4),遠位脾腎静脈吻合術5,6)がある.そしてそれらの術式は各施設の努力によつて,現在一応満足すべき成績をおさめているのであるが,それらの術式がもたらすであろう病態また適応に関して,必ずしも一致した見解が得られている訳ではない.著者が北大第二外科で行つた胃上部離断術10例,選択的遠位脾腎静脈吻合10例について,術前と術後1ヵ月の門脈造影所見を対比したのが表1である.直達療法施行例では術前門脈径を1.0とすると術後は1.41±0.47と拡大傾向にあり,選択的遠位脾腎静脈吻合施行例では術後0.95±0.11とむしろ縮小傾向にある.直達療法と選択的シャントは,その目的とするところは同じであつても,術後の門脈血行動態はそれぞれ異なつていると言わざるを得ない.
われわれは従来門脈圧亢進症に対し,第一選択として遠位脾腎静脈吻合を行つているので,以上の状況をふまえて選択的遠位脾腎静脈吻合の適応を述べ,さらに術式の概要について述べる.
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