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この手術の意義と適応
Ileostomyに関しては,これまで手術手技や装着器具についていろいろな工夫改善がなされてきており,また潰瘍性大腸炎のような長期にわたる惨めな病悩期間を体験した患者ではileostomyに結構適応するものとされているが,まださまざまな欠陥を有している.たとえばその最たるものはskin irritationで,文献によればileostomyの患者の26〜70%にみられるという.また装着器具の接着剤の問題,便を常に体外の袋の中に入れてぶら下げて生活しているということに由来する心理的,社会的,更には性生活上の諸問題などがあげられる.こうした在来のconventional ileostomy(Brooke)の欠陥を補うべき新しいileostomy――"continent ileostomy",または"reservoir ileostomy"――の手法がスェーデンのKock教授によつて1969年に発表され,その後,彼によつてさまざまな工夫改良が加えられ,彼個人の症例数も1973年にはすでに90例に達している.以来continent ileostomyは欧米の斯界で急速に注目を浴び,いくつかの大施設からの報告も重ね,1975年カリフォルニアで行なわれた大腸直腸外科学会のシンポジウムでもとりあげられるに到つている.
Continent ileostomyの主眼点は,①reservoirを有すること,②nipple形成によるvalvemechanismをもつという2点で,reservoirは術後速かに十分な容量をもつに到り,頻回なカテーテル挿入による排泄の要なく,nipple形成によつて腸内容の漏出を完全に防ぎ,conventionalileostomyの大きな欠陥である厄介なapplianceは不要で,skin irritationの問題もないのみならず,社交,スポーツへの積極的な参加を可能ならしめ,また性生活もconventional ileostomyに比して快適であり,特に未婚の男女にとつては考慮されてよい手技ではないかと考える.Kock教授は,conventional ileostomyからcontinent ileostomyへの転換を行なつた患者についての調査で,一見よくconventional ileostomyに適応していると考えられていた患者が,どれ程深刻な影響を受けていたかについて述べている.
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