カラーグラフ 消化器内視鏡シリーズ・29
急性胃潰瘍—幽門部
高木 国夫
1
1癌研究会附属病院外科
pp.1490-1491
発行日 1977年12月20日
Published Date 1977/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206853
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近年胃の急性病変,とくに急性ビランや急性潰瘍について非常に関心がもたれてきている.従来は,胃痛に対して,対照療法により,疼痛の消失した時期に検査を行なうことが多かつたが,突然の胃痛の時期に検査とくに内視鏡が行なわれて,胃内のはげしい変化が知られてきたことが1つの要因である.とくに,幽門前庭部に発生する潰瘍は,いわゆる消化性潰瘍とは,潰瘍の形態分布が異なつており,幽門前庭部の多発性潰瘍は幽門前庭部の前後壁に対称性にみとめられることが多く(図①)急性対称性潰瘍といわれてきている.
この急性潰瘍の経過は,急激な上腹部痛で発症し,発症直後には,X線写真(図②)では幽門前庭部の狭小化と共に,内視鏡所見では,幽門前庭部に大小不同の黒色の出血性ビランと幽門部の狭小を示す(図③).数日後には,点状,線状出血性ビランは瘢跡をとどめないで治癒するか,地図状の出血性ビランは,白苔を有する陥凹性病変となり,粘膜ひだの集中を伴う潰瘍(図④)となり,幽門部の狭小化も消失して,発症後1ヵ月前後には瘢痕化して治癒する.
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