特集 腫瘍の外科
綜説
膵癌の早期診断
佐野 開三
1
1岡山大学医学部砂田外科教室
pp.1000-1004
発行日 1966年8月20日
Published Date 1966/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204044
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はじめに
膵疾患,なかでも膵癌は年々増加の傾向を示し,死亡率の統計でも1950年から1960年の10年間に約3倍の上昇をみていることは,癌治療の将来.ひいては癌撲減に対する今後の問題とも合わせ考えるとき,誠に憂慮すべき事態であると言わざるをえない.消化管の悪性腫瘍においては,近時一般の認識もとみに高まり,診断技術の進歩向上と相俟つて,集団検診などの普及発達により,その治療成績は著しく改善されたことは喜ばしい限りであるが,それにひきかえ膵癌では,認識の不足と診断方法の不確実なことから遠隔成績はきわめて悲観的である.
膵はその解剖学的位置関係から考えてみても,後腹膜腔深部に存在するため,まつたく前後左右すべて他の器官組織により被覆され,きわめて高度の病変をみるまでは感知しえない.したがつてややもすれば,膵の存在すら念頭から離れ,重大な過誤をおかすことも稀ではない.また膵疾患のあるものでは,生理学的な特性から機能検査上特有の病態を把握しうることもあるが,膵癌においては特有の機能異常を認めることはほとんどない.
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