特集 腫瘍の外科
綜説
膵癌の早期診断
上垣 恵二
1
,
光宗 哲夫
1
,
山城 守也
1
,
島津 久明
1
,
黒田 慧
1
,
小林 順弘
1
1東京大学医学部石川外科
pp.1005-1012
発行日 1966年8月20日
Published Date 1966/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204045
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はじめに
膵癌の診断が,腹部外科疾患のなかでも,とくに困難なものに属していることは衆知のところで,死に直面した進行膵癌すら,適確に診断できない場合が往々見うけられる.まして早期診断ともなると,そのむずかしさは格別で,ありきたりの方法ではお手あげのことが少なくない.問題をさらに複雑にしているのは,膵癌の進展型式についての病理組織学的検索や分類が確立されていず,早期胃癌ににかよつた早期膵癌の概念が,臨床医学に導入されていないことで,いきおい,早期診断についての検討は漠然としたものにならざるをえない,たかだか,今までよりはすこしでも早い時期での発見とか,外科的に根治手術が可能な時期での発見とかの程度に解釈されることが多いことになる.すべて,現段階ではやむをえないと思われるけれども,理論性の欠除はおおうべくもなく,その開発は焦眉の急と考えられる.
私どもは過去16年間に94例の膵癌を経験した.そのうちわけは第1表に示す通りであるが,切除率はわずか12%にとどまり,如実に早期診断のむずかしさが示されている.これらを母体にして早期診断にかんする検討をおこなうことには幾分の無理はあるが,上の線にそつた立場から努力を続けているので,得られた結果の大要を,臨床症状の分析と臨床諸検査結果の分析とに大別して,以下にのべてみる.
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