特集 上腹部外科臨床の進歩
胃十二指腸潰瘍の穿孔
勝屋 弘辰
1
1熊本大學
pp.563-571
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201121
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
まえがき
ここにいう穿孔とは急性穿孔の謂いであつて,潰瘍が突然癒着のない遊離腹腔内に破れる場合を指し,穿孔の結果多くは急性腹膜炎を招来する.急性穿孔に対して穿通なるものがある.この場合にも潰瘍はやはり胃壁全層を侵触するが,漿膜を穿破するにさきだつてまず潰瘍部と隣接臓器たる肝,膵,横行結腸間膜,脾,腹壁等との間に癒着が起り,然る後潰瘍は徐々に胃壁を貫いて遂にこれら臓器組織内に侵蝕して行く,從つて穿通性潰瘍に於ては潰瘍底はこれらの臓器によつて作られている.かくの如き穿通の場合には穿孔の場合と異り穿通部と遊離腹腔とは遮断されておつて直接連絡していないので汎発性腹膜炎を惹起する惧れがない.
ここでは穿通については触れないで,もつぱら急性穿孔について述べることとする.
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.