Japanese
English
臨床報告
膵癌との鑑別に苦慮した,プレドニゾロン服用中に発症した自己免疫性膵炎の1例
A case of autoimmune pancreatitis involving pre-prednisolone treatment difficult to distinguish from pancreatic cancer
山下 築
1
,
藤川 貴久
1
,
安部 俊弘
1
,
吉本 裕紀
1
,
白石 慶
2
,
田中 明
1
Kizuku YAMASHITA
1
1小倉記念病院外科
2小倉記念病院消化器科
キーワード:
自己免疫性膵炎
,
プレドニゾロン
,
IgG4
Keyword:
自己免疫性膵炎
,
プレドニゾロン
,
IgG4
pp.295-301
発行日 2010年2月20日
Published Date 2010/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102981
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
要旨:症例は60歳,男性.1988年に膜性腎症と診断されて以来,プレドニゾロン5mg/日を服用していた.2008年7月に左背部痛を自覚し,近医で膵炎を疑われ,精査・加療目的で当科へ入院した.血液検査で膵酵素と腫瘍マーカーの上昇,造影CTで主膵管の軽度拡張と膵体尾部の腫大を認めた.ERCP,MRCPでは膵体部に約3cmの主膵管の途絶を認めた.膵液細胞診はclass Ⅱ,膵臓の病理組織学的検査は行わなかった.以上の所見から膵癌と自己免疫性膵炎を鑑別に入れた.IgG4が125mg/dlと軽度に上昇し,リウマチ因子陽性であるほかに免疫学的検査で異常は認めなかった.自己免疫性膵炎の診断基準は満たしておらず,膵体部癌の術前診断にて膵体尾部,脾臓合併切除を施行した.病理組織学的検査の結果,悪性所見は認めず自己免疫性膵炎の診断に至った.自己免疫性膵炎の発症前より長期間プレドニゾロンを服用している場合,自験例のように膵癌との鑑別がきわめて困難になることも予想される.膵癌では診断が遅れることで手術時期を逸する可能性もある.慎重に病理学的検査を行ったうえで診断がつかなければ,開腹での膵生検を含めた外科的切除を施行することも考慮すべきと考えられた.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.