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あとがき
島津 元秀
pp.900
発行日 2008年6月20日
Published Date 2008/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102182
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低侵襲手術という言葉が叫ばれ始めてから久しいが,「低侵襲」の真の意味は何かについては議論のあるところである.手術侵襲の程度により種々の生体反応が惹起され,それは神経内分泌反応やサイトカインの変動で説明できるようになり,逆にこれらの変動の程度により手術侵襲を評価・定量化する試みがなされている.手術侵襲を規定する因子としては手術時間,出血量,手術部位,切除臓器の量,重要臓器の虚血時間などとともに体壁切開の大きさが挙げられ,これらが最小限に抑えられていれば術後の回復も早いと考えられる.
内視鏡外科は主として切開創を小さくして術後の疼痛を軽減し,さらに体腔内臓器の外気への曝露と乾燥を抑えて低侵襲を目指そうとするものである.しかしながら,内視鏡手術は間接視のため視野が不良,遠隔操作のため手技が制約される,操作空間が限定される,触覚が使えないなどの難点があり,手術時間が長くなり,ときに重大な合併症を引き起こす危険性があるなど,術者のストレスも大きい.これらの問題点はめざましい機器の進歩により改善されつつあるが,内視鏡手術が真に低侵襲であるためには,手術時間と出血量が許容でき,合併症が低く抑えられるなどの安全性の担保が必要である.そのためには手術手技の基本に習熟し,手術器械を適切に使いこなす知識と技術の裏付けが必要であることは論を俟たない.これは開腹手術であろうが,内視鏡手術であろうが共通の原則であり,開腹手術に熟達すれば内視鏡手術をマスターすることは困難ではないと考える.
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