ひとやすみ・34
先に手を挙げたほうが勝ち
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.856
発行日 2008年6月20日
Published Date 2008/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102172
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世界のOECD各国と比較すると,日本の医師数27万人は12万人不足しているとされている.しかも,日本では医師免許証を持つすべての人を生涯現役医師として計算しているが,他国では65歳以上は集計に入れないのが通常である.昨年行われた日本消化器外科学会のアンケート調査でも外科医の不足は著明で,外科医の過労死さえ危惧されている.
私と同期である妻は,しがない皮膚科開業医であった(2007年11月まで).あまり営業努力をしないこともあり,外来患者は1日あたり平均30人前後と閑散としていた.また,周囲に同業者が増えたこともあり,外来患者数はじり貧状態であった.さらに借りていたビルも古くなり,永らく勤務している看護師さん達も高齢を迎えた.それより何より,妻の就労意欲が減退していた.妻の廃業理由は「医学部時代の同級生は病気でもなければ現役として働いているけれど,高校時代の女性友達でフルに働いている人は数少ない.さらに夫は団塊の世代であり,すでに退職している人が大多数である.医師であるからといって,いつまでも働きたくない.そもそも子供らも社会人として独立しており,贅沢をしなければあなたの給料で生活でき,働かなくてはならない理由が見あたらない.それより,体が動けるうちに好きなことをしたい」というものであった.そして,シルクロードなどの旅行パンフレットを見ては,1人ほくそ笑んでいる.
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