特集 肝細胞癌治療の最前線
肝細胞癌に対する生体肝移植治療:適応拡大に向けた新たな戦略
佐藤 好信
1
,
山本 智
1
,
中塚 英樹
1
,
大矢 洋
1
,
原 義明
1
,
小林 隆
1
,
竹石 利之
1
,
畠山 勝義
1
Sato Yoshinobu
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器一般外科学分野
キーワード:
肝細胞癌
,
生体肝移植
,
ミラノ基準
,
AFP mRNA
,
h-TERT Mrna
Keyword:
肝細胞癌
,
生体肝移植
,
ミラノ基準
,
AFP mRNA
,
h-TERT Mrna
pp.309-316
発行日 2004年3月20日
Published Date 2004/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100567
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要旨:肝細胞癌に対する生体肝移植医療の問題点と筆者らの独自の試みを述べた.適応基準としてミラノ基準が世界的な基準となっているが,生体肝移植においてはより優れた適応基準,そして適応拡大をもたらす戦略的治療の必要性が求められている.
筆者らは新たな適応基準として,移植後流血中肝癌細胞の転移着床の観点から血中h-TERT mRNAに注目した.また適応拡大の工夫として,ミラノ基準逸脱例に移植前5-FU+IFNβによる免疫化学療法,そして術後転移着床予防としてアドリアマイシンの全身投与と5-FUの門脈内投与(Sandwich chemotherapy)を試みた.さらに免疫抑製剤の早期減量のためドナー血門脈内投与を行った.移植直前h-TERT mRNA陽性症例は全例早期再発をきたした.また移植前陽性症例であっても,免疫化学療法で陰性化した症例は再発を認めなかった.ドナー血門脈内投与は免疫抑制剤の早期減量,ステロイド早期離脱を可能にした.今後より良い適応基準と治療法の開発により,ミラノ基準をこえた適応拡大が可能となってくるものと思われる.
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