外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・28
虫垂周囲膿瘍は緊急手術が必要か
安田 一弘
1
Yasuda Kazuhiro
1
1大分大学医学部第1外科
pp.470-471
発行日 2006年4月20日
Published Date 2006/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100417
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急性虫垂炎はありふれた疾患であるが,炎症の程度が様々で多彩な臨床像を呈するため,適切な診断と治療が求められる.外科医の診療は「虫垂炎に始まって,虫垂炎に終わる」とも言われる.
「手遅れになると虫垂炎は恐い」ということで,見逃しや重症化を避けるため,これまでの治療は緊急手術が第一選択とされてきた.特に穿孔性虫垂炎や膿瘍形成性虫垂炎は手術の絶対的適応とされ,わが国では多くの症例に対して緊急手術が行われているのが現状である.しかし,膿瘍形成性虫垂炎に対する手術は虫垂根部の処理が難しく回盲部切除が必要になることもあり,術後は腹腔内膿瘍や創感染などの合併症をしばしば起こす.欧米では1980年代から膿瘍形成性虫垂炎に対する抗生剤治療や経皮的ドレナージなどの保存的治療と炎症軽快後の待機的虫垂切除術(interval appendectomy)の有効性が報告されるようになってきた.
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