Japanese
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特集 神経変性疾患におけるグリアの細胞骨格異常
進行性核上性麻痺とAlzheimer病におけるglial fibrillary tangle
Characterization of Glial Fibrillary Tangles in Progressive Supranuclear Palsy and Alzheimer's Disease
西村 正樹
1
Masaki Nishimura
1
1京都大学医学部神経内科・生体情報科学
1Departments of Neurology and Biological Sciences, Faculty of Medicine, Kyoto University
キーワード:
glial fibrillary tangle
,
neurofibrillary tangle
,
tau protein
,
progressive supranuclear palsy
,
Alzheimer's disease
Keyword:
glial fibrillary tangle
,
neurofibrillary tangle
,
tau protein
,
progressive supranuclear palsy
,
Alzheimer's disease
pp.895-903
発行日 1996年10月1日
Published Date 1996/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901009
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I.はじめに
神経変性疾患を定義付けることは容易でないが,これは取りも直さずそれらの原因と病態機序が不明であることによる。成熟に伴い一度は完全にその機能を獲得した中枢神経がなんらかの要因により,機能の一部を徐々にかつ選択的に失っていく。それは中枢神経の機能細胞であるニューロンの選択性をもった死滅,つまり神経病理学的にはある限局したニューロン群の脱落像という痕跡を残す。したがって,変性疾患の研究がニューロン死を中心課題とし,残存するニューロンにみられる特徴的な形態変化を重視するのは頷ける。ニューロン死の選択性についても,成熟ニューロンの局在や種類による多様かつ高度な特殊化によって説明されるかも知れない。しかし,健全な機能単位としての中枢神経を構成する要素はひとりニューロンのみではない。中枢神経を構成する細胞のうち最も多いのはグリアである。ところがグリアに関してはほとんどの変性疾患において注意を引くことはなかった。変性疾患にグリアが関与することはないのであろうか。病的変性に陥る細胞がニューロンに限られるという証左があるわけではない。この意味で変性疾患におけるグリアの変化は不当にも過小な評価を受けてきたように思われる。
しかし近年になりようやく,グリアにもいくつかの形態変化が記述されてきた。そのなかには疾患特異性の高いものやニューロンと同等の病理変化を示唆するものが含まれる。
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