Japanese
English
特集 神経結合形成の諸問題
脊髄反射弓の形成
Formation of the Spinal Reflex Arc
工藤 典雄
1
Norio Kudo
1
1筑波大学基礎医学系生理
1Department of Physiology, University of Tsukuba, Institute of Basic Medical Sciences
pp.445-456
発行日 1986年5月1日
Published Date 1986/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205704
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
四肢や躯幹の感覚情報を伝える一次求心性線維は脊髄に入り,後索内を長軸方向に走行する。その途中で多数の側枝を灰白質に送り,脊髄ニューロンに結合する。その内,筋紡錘に由来する一次求心性線維の側枝のみは前角の運動核に投射し,脊髄運動ニューロンと直接結合し単シナプス反射回路を構成する。その他の,例えば皮膚からの,一次求心性線維の側枝は後角にある介在ニューロンに終わり,そこで末梢感覚情報の統合が行われる。これらのニューロンの出力は直接あるいは更に介在ニューロンを介して運動ニューロンに伝達される(多シナプス反射回路)。運動ニューロンへの効果は興奮性と抑制性の両者があるが,正味の効果が興奮性でかつ十分強ければ運動ニューロンは発火し,四肢や躯幹に反射性の運動を発現させる。脊髄反射の運動パタンは末梢感覚情報の種類とその部位によって定型的である。このように脊髄反射弓においては,入力と出力系が末梢部にあるため刺激と反射効果の観察が容易であること,神経回路を構成する要素が比較的少いこと等の理由で,その形成過程については多くの生理学的,形態学的研究がなされてきた5,34)。
近年,神経回路網の発達を研究するためには,いろいろな手法が開発され,駆使されている。そこで,この稿ではまず,これまで脊髄反射弓を対象として行われた研究の手法について簡単にまとめ,その問題点を指摘してみたい。脊髄反射弓の形成過程についてはいろいろな種で調べられているが,特に鶏胚とラットに関する研究が多い。ここでは主としてラットについて,我々の最近の実験結果を中心に述べる。
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.