Japanese
English
特集 神経結合形成の諸問題
網膜視蓋路線維の選択性
Neuronal Specificity in Retinotectal Projection
藤沢 肇
1
Hajime Fujisawa
1
1京都府立医科大学第二解剖学教室
1Department of Anatomy, Kyoto Prefectural University of Medicine
pp.437-444
発行日 1986年5月1日
Published Date 1986/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205703
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はじめに
成体の神経系でみられるきわめて複雑で,かつ定常的な神経回路はどのようにして作り出されてくるのであろうか?これは神経科学(neuroscience)の領域で現在最も関心を持たれている問題の一つである。各々のニューロンは,それぞれ,無限とも思えるような膨大な数のニューロンのうちから特定のものを選択し,これと特異的なシナプス結合を形成して一定の神経回路を形成する。神経回路の形成機構にちょっと思いをめぐらすだけで次のような様々な疑問がただちに浮び上ってくる。各々のニューロンはどのような仕組みで特定のニューロンを自己の標的として認識しているのか。ニューロン間の相互識別はどれほど厳密であるのか—ニューロン間の識別はone-to-oneであるのか,それともmany-to-manyであるのか。ニューロン相互の識別に関与している分子は何か。神経線維は遠くはなれた標的にどのようにしてたどり着くのか。ニューロン間の結合はどれほど安定なのか—一度形成された神経結合が解消されて,新たな結合が生ずることはないのであろうか。神経結合を安定化し維持する機構は何なのか。
ここでは,主として魚類,両生類鳥類などの視覚路を例にして,上に書き出したような疑問に対しどれほどの解答が得られているのか述べてみる。
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