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あとがき
高倉 公朋
pp.1049
発行日 1983年10月1日
Published Date 1983/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205209
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今年の夏,久しぶりに中国を訪れた。この前に訪ねたのは,文化大革命がはなばなしく進行中の七年前のことであったが,この間に中国の社会情勢には著しい変化が起きていることがよくわかった。街中で女性が着ている服も,以前は国民服だけであったが,今回はその装いもカラフルにスカート姿に変っていた。若い女性のおしゃれも洗練されて,個性を感じることができた。しかし社会情勢のさま変りの中でもっとも印象的だったのは,街行く人の姿ではなく,この国に言論と文化の自由が訪れたことであった。七年前には,私は一言一句話しをするのに注意を払わねばならなかったが,それは自分のためではなく,中国の方々に迷惑をかけてはいけないという配慮であった。しかし今回は,どんなことも話し合うことができたし,言論の自由をしみじみと味わうことができたのであった。
科学の進歩には,何はともあれ,物の考え方,見方にお互いの自山な意見と意思の交換,討論のなされることが,必要な最低の条件である。それなくして相互理解も進歩もありえない。
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