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あとがき
高倉 公朋
pp.108
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205064
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- 文献概要
わが国の死亡順位で永らく第一位を占めていた脳血管障害が第二位に下がり,癌がトップに立ったということが,ジャーナリズムに何度となく取り上げられると,世の中一般の人々は,癌だけが恐ろしい病気で,脳血管障害は既に解決され余り重要な疾患ではなくなつたような錯覚に陥つてくるようである。わが国の医療行政そのものが癌と心臓病ではその対策と研究に比較的力を入れているように見えるけれども,脳血管障害には極めて無頓着である。しかし脳卒中が重要な疾患であることは,昔も今もいささかの変りも無い。血圧,血清コレステロール,脂質,血液凝固と線溶系の検査から,食餌,生活の指導など日常の医師の努力から,もっとも一般的な医療の段階で,脳血管障害が予防され,その死亡率も減らしている現状は,予防医学的に見ても実際には著しい進歩を遂げている分野ではないかと思う。
本誌で脳血管障害が特集として組まれることはめつたに無かつたことであるが,それは余りに一般的な疾患で目新しいことが無いからということであろう。しかし,考えてみれば,もつとも普遍的な疾患の予防と治療こそ,国民一人一人にとつては一番切実なことである。今日の脳血管障害の予防,診断と治療の最良の方法を知つて,その限界を越えてさらに進歩させる方向を探つてみることは,脳疾患を専門とする医師にとつては常に重要なことである。
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